ダカールで商売を。

日本の良さは西アフリカへ伝わるか?セネガルにて小売店を経営。つくり手と買い手をつなぎます。

ダカールは海藻ゼリーの夢を見るか?

 

以前以下の記事に書いたように、自分が今やりたいことの一つとして

セネガル地場の材料を日本の技術・文化を使って商品化し、店頭で売っていきたい

というものがあります。

senegal-business.hatenablog.com

 

その一つとして取り組んでいるものが

セネガルの海藻を使ったゼリー(寒天)の商品化」

です。

現在進行形で進んでいるこの取組みに関して、逐次このブログでも書いていければと思います。

 

魅力的な寒天の世界

「日本の食べ物を売るなら寒天を使ったゼリーなんてどうだろう?ちょうど寒天の材料が西アフリカで採れるみたいだよ」

きっかけはある日友人から言われたこんな一言。

寒天」、耳にしたことはあるけれどお菓子作りをしない自分にとってあまり馴染みのなかったこの食べ物。言われてみれば数年前に健康情報番組でブームとなったことぐらいがうっすら頭の片隅にあります。

実際に調べてみると以下の点が面白いな、と感じました。

  • 海藻(主にテングサ)から作られる食べ物であること。
  • 日本発祥のものであること。
  • ほぼカロリーがなくほとんどが食物繊維のため健康にとても良いこと
  • 羊羹、ゼリー、フルーツポンチなど幅広い用途への展開が可能なこと
    寒天 - Wikipedia

 他方、周囲のセネガル人に「ゼリーを食べたことある?」と聞いてみると、みな一様に首を横に振ります。

ほとんどがイスラム教徒のこの国では、ゼリーは主に豚由来のゼラチンから作られるものと見られており人々が普段食べることはないとのこと。
確かにスーパーなんかでもほとんどみかけることはありません。

日本発祥で健康にも良い寒天ゼリーを、セネガルの人々に新しい食べ物として紹介し食べてもらえたら面白いのではないか?

そんなことを調べているうちに思い出しました。

 

アフリカの寒天産業

一方で気になるのは「寒天の原材料が西アフリカでとれるらしい」という情報。
日本の伝統的な食べ物である寒天とここら辺の地域がいまいち頭の中でつながりません。

本当に寒天(の素となる海藻)が西アフリカでとれるんでしょうか?

ためしに通関統計を調べてみると面白い事実が見つかりました。

以下は14年の寒天の国別輸入量の内訳です。

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出典:Trade Statistics of Japan Ministry of Finance

 

輸入量の約半分を南米のチリが占めているということもさることながら、第3位にセネガルに地理的に近いモロッコが入っていることに驚かされます。

モロッコは2014年の一年の間に約218トン、約6.4億円の寒天を日本に輸出しています。

 

加えて、半製品である寒天だけでなく、原材料である海藻*1の2014年の統計を見てみると以下の通りになります。

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出典:Trade Statistics of Japan Ministry of Finance

 

原材料の輸出ではモロッコが他国を抜いて一位になっており、約645トン・2.5億円を輸出していることが見て取れます。
近年、国産のテングサ生産量は年間800トン*2とのことなので、それに近いぐらいの量を日本に輸出していることが分かります。

 

日本の羊羹やゼリーの素となる寒天、そしてその材料であるテングサが遠く北アフリカや南米から来ているというのはとても不思議な感じがします。
日本発祥の食べ物が地球の裏側の材料で生産されている。

グローバリゼーションというか、世界の繋がりの強さがそこにえは見える一方、同時にそれははるか地球の裏側で起こる数々の出来事も決して自分の生活と無縁ではないという事実を改めて感じます。

 

グローバリゼーション 人類5万年のドラマ (上)

グローバリゼーション 人類5万年のドラマ (上)

 

最近読んでいるナヤンチャンダのこの本は、世界が緊密に繋がっていく「グローバリゼーション」の営みが人類が生まれた時から連綿とつながるものであるという事実を描き出しています。 

 

さて、これらのデータを見ていくと当然頭によぎるのは

 「モロッコでテングサが採れるのならセネガルでも採れるのではないか?

ということ。

 

北アフリカで採れることは分かったのですが、ここセネガルではどうなのでしょう?

 

ということを考えるのは自分だけではないようで、これに目をつけ調査をしている方たちがいました。

 

セネガルの余剰海藻

ほんとうにちょうど、というべきか私がセネガルに来た直後の2015年3月まで、JICAの専門家の方が漁業・海事省 海底資源管理利用局からの要請の下、ダカール大学などと協働で

海藻資源の潜在量評価研究

というプロジェクトをされていたのです。*3

 

報告書などにもあるように、この様な調査研究の背景には

  • ダカール近郊の海岸に大量の海藻が打ち上げられていること
  • その利用や管理の検討、およびその前提として資源量把握をする必要がある

というものがあります。

つまり「海藻自体はセネガルに豊富に存在している」ということらしいのです。
(そしてあまりに量が多い場合、その一部が腐敗するなどして問題となることも)

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写真引用元:平成 24 年度科学技術研究員派遣事業「海藻資源の潜在量評価研究」(セネガル)
浜辺に大量に打ち寄せた海藻。

 

多くの方にヒアリングにご協力をいただいた結果、一方で以下の点がわかってきました。

  • ダカールには寒天の主材料であるテングサ、特にその中でも中心的な「マクサ」は殆どないとみられる。
  • 海藻はダカール近郊のンゴール島、南に70キロほど行ったムブールという場所で採れるらしい。
  • 過去、いわゆる「テングサ」ではないムブールの海藻を使ってゼリー作りに成功したことがある。

 

ゼリー作りにチャレンジしよう!

「もしセネガルの海藻を使ってゼリーを作り、販売していければ・・・」と空想は広がっていきます。

  • 日本の食文化をセネガルに紹介できる
  • ダカールの人々に新しい食体験を提供できる
  • セネガルで一部問題となっている余剰海藻の利用につながる
  • 海藻の買い取りを通して地元の方の収入創出につながる

という形で様々な点でメリットが思い浮かんできました。
また

ゼリーなどに使う材料、シロップやフルーツも開発に関係するものを使えれば、それらの販売先につながり、やはり農村部の方などの収入増加につながるのではないか?

とも思いました。

もちろん商売的にもこうした食品を売っていくことにはメリットがあります。

食品は一般的に利益率が高い一方、回転も早いのでお客様に少しでも多く来店してもらうことにもつながると考えられます。
ちょうどコンビニなんかでも食べ物は主要な商品となっているように。

 

できるかわからないけどセネガルの海藻でゼリーを作りにチャレンジし、それを売っていこう!

 

これらの理由から、海藻からのゼリー作りを始めました。

いまはまだ試行錯誤中。これを書いているいまも本当にできるかどうかもよくわかりません。

その過程をここで書いていこうと思います。

*1:テングサその他寒天製造用の海藻」(HSコード:1212.29.190)および「テングサ科」(HSコード:1212.29.211)の合計

*2:てんぐさ かんてん〈糸寒天〉専門の 森田商店

*3:詳しいプロジェクト概要は下記ページから。
海藻資源の潜在量評価研究| セネガル事務所 | 海外のJICA拠点 | JICAについて - JICA