イスラム教徒のバレンタイン?
イスラム教の国であるセネガルでバレンタインの企画を行いました。
果たして受け入れていもらえるのか?
回復のための秘策は?
「うーん、これは・・・」
それは2月頭のこと。書き込まれたグラフの推移を2人でのぞきこみ、思わず眉をしかめます。
開店から2ヶ月目。最初かなりの数字を記録していた来客数がここに来て減少してきていました。
「1ヵ月目は特別。2ヵ月目にはよくてそれが半分になると思え」
イスラム教の国でバレンタイン??
バレンタイン??
セネガルはイスラム教の国。ムスリムの割合は90%を超え「イスラム協力機構」の加盟国ともなっています。厳格な方ではありませんがその教えは生活の中にかなり根付いているといえます。
そんな国でバレンタイン??
不思議そうな表情をしている私にSeydinaは続けます。
「なに不思議そうな顔してるの?日本だって神道と仏教の国だけどあれだけバレンタインやってるじゃない?いやぁ、懐かしいなぁ。僕も昔メッセージカードを買いに行ってプレゼントしたものだよ」
まぁ、言われてみればそうですがセネガルでもバレンタインが盛んだったとは。意外でした。
ここでのバレンタインは「男女両方がそれぞれの想いを伝える日」という形式のようです。送るものもチョコと決まっているわけではなく、なんでも良いとのこと。
日本とは少し違いますね。
さっそく売り場作り!
そうと決まれば話は早い。さっそく日本からいくつかのバレンタイングッズを仕入れ、売り場作り開始です。
商品展示用の机をセッティング
探している時間があまりなかったので、自宅にあった勉強机を間に合わせで持ち出し。
商品ラックをつけるためのバーも近所の業者さんに急遽発注。
すぐ頼んでサッと作ってもらえるのは馴染みの職人さんがいるおかげ。
男だけなのにキャッキャ言いながらリボンなどで飾りつけをしていきます。
ショーウィンドウ側には肉厚の「インテリアジェル」というステッカーを貼っていきます。
この後、来店した子供たちがみんなこれを触りたがり守りきるのが大変でした・・・。
男性はバラを贈るとの話もあり造花のバラも仕入れてみます。
そして完成したコーナーがこちら。
まだまだ素人レベルですが、なんとかできあがりました。
反応は上々!
コーナーが完成した直後、さっそく外から学生と見られる女性が興味をもって入ってきてくれました。
「ちょうどプレゼントのラッピング素材を探していたところだったの!」
「他ではあまり見かけないかわいいカードがステキね」
というコメント。
ここでも日本の商品の「かわいさ」が受け反応は上々。
その後もバレンタインが近づくに連れて入店してくださるお客様が増えてきます。
男性が妻のためにバラを買ったり、女子大学生が彼氏のためにプレゼントを買ったりという光景を目にし、「セネガルでも本当にバレンタインってあるんだ」という事を肌で実感できました。
さて、それまでやや減少傾向にあった来店者数。
バレンタインコーナーの設置後は20%増を記録し、売上共に回復しました。
特に今回、これまでご来店いただけなかった方に多く来て頂けたことが嬉しかったです。
目を引く商品のおかげで新規顧客の獲得につながり、また関連商品の購入にもつながりました。
やっぱり女性主体?
「男女双方が贈り物をし合う」と事前に聞いていたセネガルのバレンタイン。
実際のところどうなのか?
私たちの店舗ではPOSの導入による購入者データの蓄積を行っています。
そのデータから見た男女別構成比は以下のとおり。
バレンタイン期間中の商品購入者性別比(人数ベース)
ご覧の様に女性の比率が過半数超え。
(ちなみに普段お買い上げ頂いているお客様の男女構成比には大きな片寄りはありません)
買い物をされる様子を見ていても、女性はメッセージカードやステッカーなど様々な商品を購入されていました。一方で、男性はすっとご来店されてバラのみをご購入される、というケースが多かったように思います。
この情報のみでセネガル全体を判断することなど当然できませんが、データと経験としては女性の方が男性より熱心であったといえそうです。
今年は初めての試みということで仕入れる商品なども全てが模索状態。
ですが今回の経験で、商品毎の販売数や性別・年齢別の細かい販売データが取得できました。来年はこれらに基づきもう少しよく対応することができそうです。
決して全面的に受け入れられているわけではない?
私たちのほかにも期間中は多くの店で企画をやっているのを目にしました。
少なくともダカールにおける商業サイドにおいて、バレンタインは一定の定着をしているといえると思います。
ただし、そこに葛藤が全く無いかといえばそういうわけではなさそうです。
例えば我々の店で現在、依頼を受ける形で販売しているイスラム教系の雑誌。
割と敬虔なイスラム女性に向けて作られたこの雑誌ですが、その特集の一つが
『バレンタインのお祝いはイスラムにおいて許されているか?』
敬虔なイスラム教徒女性に向けた雑誌。表紙のモザイクは「肌を露出するのは良くない(穏やかさが得られない)」というニュアンス。
この特集の結論としては「バレンタインはイスラムを信奉するセネガルにおいて許されてはいない」というものでした。
という理由が挙げられています。
特に1)については預言者ムハンマドの言葉として
「他(キリスト教徒)のマネをする者達は既に去っている(≒イスラム教徒ではない)」
とのものまで引用されており、バレンタインは許されないとの論調です。
イスラム教の国として、旧植民地として、手放しでなんでも受け入れられるわけではないぞという姿勢がそこには見えます。
とはいいつつ、一般の人々が大いに楽しんでいる光景もそこにはあるわけです。
日本と同じ様に建前としては色々ありつつも、単に盛り上がるイベントごととして、これからもより浸透していくのではないでしょうか。
商業関係者としてはホワイトデーもなんとか根付かせて、もう一山作ってみたいところではありますね。