ダカールで商売を。

日本の良さは西アフリカへ伝わるか?セネガルにて小売店を経営。つくり手と買い手をつなぎます。

思いもよらない開店広告。

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開店直後に意外なものが開店広告になることを知りました。
 

  

ダンボールは絶好の開店広告?

開店から数日経ち、ようやく店の前につみあがっていたダンボールを倉庫に積み出したひのこと。

 

近所に住む親しいセネガル人の男性から「ダメだよこんなに早くダンボールを片付けちゃ!」とのアドバイス。

 

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店先に積み上げたダンボール。すぐ片付けてしまったが・・・

 

不思議な話です。

私は最初何を言われているのかわかりませんでした。

日本人の感覚からすれば店の前のダンボールなんて「まだ開店準備中」と言っている様なもの。

開店した以上は一刻も早く片付けたかったのです。

でもここではそうではないらしいのです。

 

彼に言わせると

ダンボールこそ開店の証なんだからもっと置いてなきゃダメだ!」と。

 

輸入商売の多いセネガル特有の事情 

よくよく話を理由を聞いてみると確かになるほどと思える話でした。

 

ここセネガルでは基本的にほとんどのものは海外からの輸入品。

個人レベルでも、ヨーロッパやアメリカの知人親戚からコンテナ一本分の商品を運んできて売られている方が多くいます。

 

アフリカから増え続ける先進国への移民。
移民先で一定のお金がためたらコンテナでも仕立てて、本国でゴロゴロしてる親戚に店番をさせて更に儲けるか、と考える方が多いのではないかと見受けます。

 

そういった方たちの商売のスタイルはよく言えば「ラフ」。

港から荷物の詰まったコンテナを持ってきてガレージなどの軒先にダンボールだけを卸してその場で販売していきます。

これもある意味で「ガレージセール」でしょうか。

 

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ダカールでは日常的に家先でのコンテナの荷卸しを目にする。

そうして物を売っている方たちをダカールではそここで見ます。

もちろん、それらの「店」は棚などの什器を備えたりはしません。当然開店記念の花なんかもありません。

コンテナから卸したダンボールそれ自体が、そのまま開店したての証

 

当然、コンテナ商売は組織的、継続的な仕入れではないので良い商品は早い者勝ち。

興味のある人々はダンボールを見るや否や、こぞって掘り出し物がないかと押しかけます。

 

こうした店が多くある結果、ここダカールでは「ダンボール=開店」という認識になっているのだ、ということ。

たしかにそう言われてみればそうだなぁ、と思わされました。

 
やってみてはじめてわかることばかり

開店のお知らせがダンボールなんて、やっぱり店をやらなければ全く想像もできなかったことだなと。

 

「郷に入れば郷に従え」と人は言います。

が、時として従うべきその「郷」とは何か?それが必ずしも明示されているわけではありません。

やってみてはじめて従うべきものが何かがわかることもある。

そんなことを改めて感じた瞬間でした。

もちろん、現地人のパートナーであるSeydinaは一般常識は当然知っています。しかし彼とて小売経験者ではないため、やっぱりやって初めてわかることが沢山あるのです。

 

日本のダンボールで育つ羊

ところで開店前には「品を並べた後に不要になったダンボールはどうやって処理したらいいんだろう?」ということもしばしば考えていました。お金を取られたりするのも面白くありません。

 

ついでなので前述のアドバイスをくれた方に伺ってみると

「そんなの畳んで店の前においときゃいいんだよ」

とのアドバイス。

 

不審に思いながらも置いてみるとびっくり。次から次へとセネガル人の方が来てダンボールを所望してくださり、出してから一時間もしないうちにきれいさっぱり無くなってしまいました。

 

なぜそんなにみんなダンボールを欲しがるのか?

も聞くとなるほど。

羊に食べさせるんだ!」と。

 

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軒先でよく飼われている羊。なんだかものすごくこちらを見ている・・・。

 

こちらでは特に一年で最も大きなお祭りである犠牲祭(タバスキ)に向けて、家の軒先や屋上で羊を飼っているのを良く見かけます。それらがダンボールを好んで食べるそうなのです。

羊へのえさ代もばかにならないのでしょう、タダで手に入るダンボールをエサとして皆欲しがるというわけです。

 

かくして日本からはるばる地球の反対側までやってきたダンボール達。ちょっとのあいだプロモーションの道具になった末、最後は羊たちのエサとして美味しくいただかれました。

 

日本のダンボールで育った羊たちは味も他よりも少し美味しくなるかも?

なんて思いながら、手早く空き箱が処理できた事に思わずほくそ笑んだ一日でした。