ダカールで商売を。

日本の良さは西アフリカへ伝わるか?セネガルにて小売店を経営。つくり手と買い手をつなぎます。

物件探し、ふりだしへ。

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「この物件、他の人に貸し出すことに決めたんだよ。2階のフロアを借りないか?」

借りる予定だった物件のオーナーにそう言われた途端、血の気が引いていくのがわかりました。

 ダカールで商業物件を探すのは難しい

今年の9月以来、小売の店舗物件を見つけるべく活動をし始めました。探していくうちにわかったことは「ダカールで商業物件を探すことは難しい」、あるいはとても大変だということ。

 

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内見をする物件を見つけるまでも一苦労

これにはいくつかの理由が挙げられます。

  1. そもそもの供給数が限られている。
    現在探している物件は店舗として使うため、当然路面店に限られます。ですがこの路面店の供給数がとにかく少ない
    2階以上のオフィスやアパートですら若干探すのが難しいぐらい全体的にダカールの建築は利用者に対して不足気味な傾向にあります。ましては路面店となるとさらに苦しくなります。
    もちろんそれに対してダカール各所で建設ラッシュが進んでいるのですが、需要に追い付いていないのが現状です。

  2. 反対に需要は大きい。
    限られた供給とは反対に需要が大きいことを探している中で強く感じます。例えば内見に行っても次から次へと他の見学者が見に来ます。
    また少し良いなと思える場所があっても数日経つと別の方に決まってしまっていることがザラです。
    競争相手となる需要者はセネガル人もいますが、西アフリカ周辺国から移り住んできて商売を始めようとしている移民の方々も結構な割合を占めている印象です。

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    表立って入居者を募集している物件はごく一部

  3. 情報を得るのが大変。
    上記のような借り手にとっては厳しい市場環境のなか、さらに大きいのが空き物件の情報が殆ど公にはされていない、という状況です。
    日本ではネットや不動産屋間での情報公開が進んでいますが、セネガルではそうした共通の情報基盤はほとんどありません。一部そうした不動産情報を見れるインターネットサイトもあるのですが、良い物件をはじめとした情報はほぼ表に出ていないのが実情です。
    各不動産屋や仲介人を地道に一人ずつあたり、彼らが保持している属人的な情報を少しずつ出してもらうしかありません。
    これを、アフリカ特有のアポのすっぽかしやら時間を守らない等を平気で行われる環境の中で行っていくのにものすごく時間とエネルギーを必要とします。。。

冒頭の内定物件は、そんな試行錯誤を繰り返してやっとみつけたところでした。

 

ラッキーな出会い。

血眼になって探す中でその物件に出会えたのはラッキーでした。ある住宅街を歩いていていたところ、人通りの多い三叉路に建つ建築中の建物を見つけました。

それなりに好立地なため「もう既に誰かが内定済みだろう」と思いつつダメ元で聞いてみるとなんとまだ誰もきまっていないといいます。

翌日にはすぐにオーナーにアポをとって条件交渉を申し入れました。

 

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タイミングよく見つかった物件。完工するまでのあいだ、洗剤を売るおじさんがいる。

 

結果、パートナーのSeydinaが粘り強い交渉をしてくれたこともあり、地上階部分の1/3を貸してくれることでオーナーと大枠の合意をすることができました。

 

契約させろ!

合意ができたのは10月。実はここからが長い道のりでした。。。

契約を済ませていないこちらとしては、いつ誰に取られてしまうか心配でたまりません。そのため一刻も早く契約を済ませたい気持ちでいっぱいです。

ところが先方のオーナーは隣国への出張や多忙を理由に、なかなかこちらの要求している契約書の内容確認やサインのためのアポ取りに応じてくれません。

ジリジリを身を焦がすような日々が続きました。

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工事自体は着々と進んでいく。

 

そして内定反故へ

もちろんこちらとしても待っていたわけではなく、電話などだけではなく直接工事現場のビルに訪問して捕まえようとするのですが上手く捕まえられません。

あるいは、たまたま会えて「では翌日にサインを」とアポをとってもキャンセルされることも何度かありました。

もちろん、そうした態度をとられていることは相手が何か腹に一物があってのことだというのは明らかだったのですが、こちらとしてはこの物件で決めてしまいたかったため粘り強く行動する以外、どうすることもできません。

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毎日の様に通った物件現場。入口の羊とももうだいぶ馴染みに。

 

会えた時には口では「大丈夫だいじょうぶ」とばかり言う。

ダメならダメで次に行動していけますが、こうして振り回されるのが一番ツラいですね。

 

そしてある日訪ねて行った時に、よそに1階のフロア丸ごとを貸すことで決まったと告げられたのです。

 

悲しさと徒労感

半ば予期していたこととはいえ、ショックはショック。

そしてどうにも覆らないことは承知をしながらも、この時は猛烈に相手に対して怒りを見せました。

腹が立った、というよりも「悲しかった」というのが正直なところ。

東でも西でもアフリカにおいて「言葉の持つ重み」が日本に比べて比較にならないほど軽い、というのはよーくわかっているのです。だからこそ契約できるまで心配でたまらなかったわけですし。

でも一方で、今回「この人なら…」と思っていた部分も正直あったのです。

会って、目を見て、会話をした上で「大丈夫だろう」と判断していた自分。

 

今回どうしようもなく怒りが込み上げてきたのは「お前もか」と失望させられたと同時に、やっぱり自分の見る目がまだまだだと痛感させられたダブルの悲しみでした

 

そして知って欲しかったのです。言葉が重い側の国から来た者として、言葉の持つ重みをもう少し感じて欲しいと思いました。

これがセネガル人のやり方か?これがあなたたちの商売のやり方か?

そんな投げかけた失礼な言葉に対して、申し訳なさそうに相手が目を伏せたのがせめてもの救いだったような気がします。

 

再出発

こんな時コンビであるということは強い。

キーキーと相手に食ってかかる自分をパートナーのSeydinaがなだめて言います。

「忘れよう。次にいこうよ。」と

自分の過去の経験や、セネガルのことわざを用いて「人生万事塞翁が馬」というようなことを伝えてくるのです。滔々と。

いつも好き勝手なことを言いながらもやっていけるのは、こうして彼が冷静になっていてくれていることが大きいのは間違いありません。

 

物件探しは大きなエネルギーを伴います。今回は時間も浪費してしまいました。

彼のような頼りになり支えてくれる相棒がいなければ、とうに投げ出してしまっていただろうと思います。ほんとうに、ありがたいことです。

 

とはいえ、けっきょくこうして私たちは再び物件探しの旅へとでることになりました。