48時間で完了!?セネガルでの法人設立の仕方。
セネガルでの法人設立についての書いた記事の続編です。
今回は具体的な法人設立手続きについて書いていきます。
なお、内容は基本的にSARL(有限会社)設立を想定。
前回の記事、法人の種類などについては以下をご参照ください。
senegal-business.hatenablog.com
頼れる強い味方、APIX
これからこちらでいくつかの情報を書いていきますが、基本的には
「わかんないことがあったらとにかくAPIXへ行く!」
というのが原則になります。
APIXとはセネガルの投資・大規模事業促進公社の名称で、形態としてはSAです。
当該活動における政府の認可を受ける唯一の企業体であり、各種のビジネスや投資にまつわるサポートや情報提供を行っています。
企業の設立や関連登記に関してはAPIX内のBCE (Bureau d’Appui à la Création d’entreprise/企業設立サポート局)が請け負っています。
そして重要なことは、これらの支援は基本的に無料で受けられる。 ということです。
なので困ったらまずAPIXに行って聞くのが一番の手段となります。SAといえどもほぼ役所のような存在で、いくと親切に色々と教えてくれます。
たった48時間で設立完了!?
「西アフリカで会社を設立するなんてどれだけ大変なんだろう?きっと発展途上国だから手続きに莫大な時間と手間がかかるのではないか?」
これを読んでいらっしゃる方もそんなことを思ったのではないでしょうか?
途上国における各種の公的手続の煩雑さは悪名高いものがあります。
では今回私たちはどのぐらいの時間がかかったのでしょうか?
答えは「たった1週間」です。
それも多少連絡の不備や行き違いがあったからで、正味3日もあればできていたと思います。
これはAPIXも明言していることであり、投資を促進するための大統領令などの施行により個人事業主であれば48時間で設立するとしています。*1
APIXのオフィスは大統領府のすぐ近く
SARL設立のステップ
さて、設立自体は短時間でできますがそれに向けて各種の下準備をする必要があります。
以下に私たちが経験したSARLの例を書いていきます。
基本ステップは以下のたった3つです。
- 資本金と設立会社の情報をまとめる
- 必要な書類を揃える
- 公証人のところへ行く
どうでしょう?とてもシンプルで簡単ではないでしょうか?
上記のステップ3まで完了すると3日と経たずに会社ができます。
資本金と設立会社の情報をまとめる
資本金の準備に関しては多く言うことはありません。SARLでは設立時に資本金を支払う必要があり、設立を依頼する公証人へ設立時に支払うというのが一般的。
なので資本金については、現金などの形で資本金を払えるようにしておくというだけです。
つづいて設立会社の情報についてです。これは定款に記載されるものです。
必要な情報は以下の通り。
- 会社名
- 本社所在地住所
- 資本金額
- 出資比率(2人以上が出資する場合)
- 事業目的
基本的にフランス語での記載です。
定款自体は上記の情報を見て公証人が書いてくれますので、資本金額以下は多少の間違いがあっても大丈夫だと思います。
特に事業目的などは書き方に困る場合もあるかと思いますが、内容がわかれば公証人の方が適当な形に直して記入してくれます。
また社名はすべて大文字で登録されます。
私たちは設立前に「SEYNOYAか、Seynoyaか、はたまたSeyNoyaか?」なんて少し悩みましたがむだでした・・・。
コピー&ペーストできるようにWordで作成し、公証人のアドレスにすぐ送れるようにしておくといいでしょう。
APIXのほか、Chambre de Commerce(商工会議所)でも情報を聞くことができます。
必要な書類を揃える
また設立には以下の書類が必要になるので揃えます。
- 日本政府が発行する無犯罪証明書
(警察証明書・犯罪経歴証明書/Casier judiciaire du pays d’origine) - セネガル現地で取得する無犯罪証明書(Casier judiciaire)
- 身分証明書(パスポート)コピー
要注意なのは1)、2)ともに発行後3ヵ月以内のものでなければいけません。
また、代表者(Geran)を2人以上にする場合は全ての人のものが必要となります。
では「実際に1)、2)をどこでとれのるか?」という話です。
実は会社設立に関して、一番時間がかかる可能性があるのはここなのです。
取得が難しい(1)日本政府発行の無犯罪証明書
これに関しては
1-A 日本の警察署に行き取得する
1-B 在外公館を通じて取得する
という2種類の方法が存在します。
たとえば1-Aについては警視庁では下記のページに案内があります。
が、1-Aは実際に取得するのが難しい、というのが個人的にチャレンジしてみた感想です。
というのも発給のために必要な下記の書類を取得するのが難しいのです。
3 提出先機関からの証明書を要求する文書等、証明書発給の必要性が確認できる書類
※ 提出先、要求事由により、確認する書類等が多岐にわたるため、電話でお問い合わせください。
ビザ発給などであればまだ申請書などがあるのでしょうが、法人登記の場合そうした証明書が必要であるという文章や書類を、日本にいる人間がセネガル政府から取得することが困難からです。
もちろんAPIXなどに依頼すれば、レター発行などに対応することは不可能ではないかもしれませんが、セネガルで対応してくれる現地人の存在が必要となります。
私は出国前にそういう人物がいなかったいなかったため、取得を断念せざるを得ませんでした。
APIXは不動産の譲渡・売買など投資促進のために幅広い支援を行っている
では考えられるのは渡航後に申請できる1-Bの方法でしょう。
事実、1-Bについては在セネガル日本大使館に行き、申請書の記入をして指紋の採取ができれば取得ができます。1-Aのように申請に必要な書類を持ち込む必要はありません。*2
ですが、ここで問題なのは下記の内容です。
- 在外公館から申請する場合は,外務省を経由して警察庁への発給取次を行っている関係上,入手までに概ね2ヶ月前後かかりますので,申請は余裕をもって行ってください。(注:証明書が手元に届くまでに3ヶ月以上かかる場合もあります。)
そう、取得にかなり時間がかかってしまうのです。
実際に自分自身もセネガルから申請し取得まで2か月ほどかかってしまいました。
そのため、会社設立に必要な「日本政府が発行する無犯罪証明書」を取得するためには
- 証明書を要求する文章をなんとかしてセネガルの政府関連機関から入手する
- 最悪3か月かかってしまうのを覚悟する
という2つのうちのどちらかを選ばざるを得ないのです。
結果的に私は時間がかかってしまうことを許容せざるを得ませんでした。
取得が簡単なセネガル現地で取得する無犯罪証明書
さて、それに対して現地の無犯罪証明書の取得はとても簡単です。
取得はダカールの裁判所(Palais de Justice)に行くだけ。
取得にはパスポートと申請料200XOFが必要となります。
午前中に申請すれば即日発行してもらえます。
3.公証人のところへ行く
さて、必要なお金、情報、書類が揃ったらあとは公証人のところにいくだけです。
「公証人はどこにいるのか?」という心配もいりません。
そこもちゃんとAPIXが公証人のリストを提供してくれます。
APIXでもリストはもらえますが、同じものがネットにもあります。
公証人のオフィスには下記のような看板がかかっています。
気になる手数料は会社の資本金によります。
私たちの場合は約25万XOFほどかかりました。
ただし、APIXの企業ガイドには公証人の費用として
- 資本金50万XOF以下の場合:20,000OF
- 資本金50万XOF以上500万XOF以下の場合:70,000XOF
という記載もあるのが気になるところですが。
(2つの公証人事務所で値段を聞き、かつ共同経営者のセネガル人もいたのでボラれてはないと信じてます)
手数料は振り込んだ資本金のお金より差し引かれます。
基本的に書類等を提出すると定款にサインをし、あとは公証人が手続きを全てやってくれます。
なお公証人の方では以下の手続きを代行。
- 組合および企業の識別番号(Le numéro d'identification national des entreprises et des associations (NINEA))の取得
- 商業および動産信用登録(Registre de Commerce et du Crédit Mobilier (RCCM))の登記
- 設立宣言
- 公告への掲載
とくにNINEAやRCCMは今後各種の申請等をする上で必要となります。
定款と書類一式をもらって設立完了!
登録ができたら公証人から定款と各種の登記書類などを渡してもらえます。
これにて設立完了。
無犯罪証明書の取得など一部難しい部分もありますが、全体的にはとてもスムーズかつ簡単に会社が作れます。
今後、セネガルで法人を登記される方はぜひ参考にしてみてください!