ダカールで商売を。

日本の良さは西アフリカへ伝わるか?セネガルにて小売店を経営。つくり手と買い手をつなぎます。

あなたはどの法人を選ぶ?(セネガルでの法人の種類と特徴)

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以前の記事で法人を設立したことをかきました。

 

senegal-business.hatenablog.com

 

今回はセネガルにおける営利目的法人の種類や設立手続きについて、自分自身が経験したことを通して書いていきたいと思います。

というのもセネガルにはJETROの事務所がなく、コートジボワールなどに比べるとこの手の情報が少ないのですね。

なお、情報に関してはなるべく正確であるように努めましたが執筆時点かつ、主に個人的な体験に基づいたものです。

 

仏語圏西アフリカ諸国では制度に共通性も

少し前置きになってしまうのですが、セネガルは国際機関であるOHADA(アフリカ商法調整機関)の加盟国となります。

"オハダ"なんて音を聞くと日本人としては「シミ」「そばかす」「皴」などが思い浮かびますが、正式を"Organisation pour l'Harmonisation en Afrique du Droit des Affaires"といいます。

旧フランス植民地を中心とした17か国が加盟しており、投資や貿易を促進していくために加盟国の経済関係の法律を協調的なものにすること、司法や法律面をより安全にすることを目的としています。(セネガルは1995年9月に加入)

 

なにが言いたいかというと、OHADAに加盟しているセネガルの法制度などは、フランス語圏各国のものと程度共通性を持ったものであるということです。

 

そのため、セネガルのこうしたビジネス関係の情報を得るにあたっては、より日本語での情報が豊富なコートジボワールのものに目を通しておくなどするとよいかもしれません。

 

www.jetro.go.jp

 

実際、税金や労働法などについて細かい話を専門家に聞く前には上記サイトにある調査レポート「コートジボワール会社設立マニュアル」に目を通すようにしています。

 

もちろん、両国ですべての制度が同じであるということはないのですが、あるていど概要が頭に入っているだけでやっぱり理解力が違います。

また専門家といっても人によって異なる情報を言われたりするので、つっこみの材料になったりします。

 

法人の種類と特徴

さて、会社(法人)を作るとなるとまず考えるべきは「どの形態を選ぶか?」ということになるでしょう。

法人の形も様々ですが、特に営利目的のものは下記が代表的なものになります。

  • 個人事業(Entreprise Individuelle)
  • 有限(責任)会社(Société à Responsabilité Limitée:SARL))
  • 株式会社(Société Anonyme:SA)
  • 営利団体(Groupement d’Intérêt Economique:GIE)

営利団体以外は形としては日本でもある程度見慣れたものなのではないでしょうか。

 

これらの法人は形態によって、当然特徴や適用される規則が異なってきます。
主な内容をまとめた表は下記の通りです。

 

 個人事業
(Entreprise Individuelle)
S.A.R.LS.AG.I.E
最低
出資者数
1 1 1 2
起業時の
最低出資額
0

0

(*3)

1,000万CFA
(*1)
0
第三者
からの
信用度
とても弱い 高い とても高い 弱い
出資者の
責任
無限定
(起業者の個人資産にまで及ぶ)
出資額に限定 同左 無限定・連帯責任
(第三者との協定に
反する場合を除く)
会計監査役
設置義務
なし 義務ではない(*2) 義務 なし
経営者 起業者 出資者から指名された代表者
(Gerant/出資者自身もしくは外部から)
社長(Directeur general)もしくは代表取締役(Administrateur General) 代表(President)
課税 サービス業や商品売買の総売上に対し、5千万CFAまでの共通包括税が課される。法人税はオプション 法人税として純利益の30% 法人税として純利益の30% GIE向けの法人税もしくは構成員向けの所得税のどちらかから選択
最低一律
課税額
0
*決算が赤字の場合に適用
最低50万CFA,最高250万CFAとして売上の0.5%を課税 最低50万CFA,最高250万CFAとして売上の0.5%を課税 0

*1:設立時に1/4を残りを3年以内に払い込む
*2①資本金が1千万CFA以上②売上が2.5億CFA以上③常勤雇用者50名以上の場合は義務
*3以前のガイドでは「最低100万CFAを設立時に完全に振り込むこと」となっていた。

引用元:「GUIDE DU CRÉATEUR D’ENTREPRISE」(Version12 08/06/16)

 

法人の形態ごとに税金や制度などが異なることがよくわかります。

 

どの法人形態を選ぶか?

制度や適用される税額などが異なってくるため、どの法人も長所、短所があります。

これをまとめたものが以下の表です。

-長所短所
個人事業
(Entreprise Individuelle)
・起業あたっての最低出資額がない
・迅速かつ簡略に設立可能
・設立費用がわずかで済む
・税務政策が大変柔軟かつ奨励的。
・起業者の責任が無制限。倒産した場合、
起業者の債務は残る
事業上のパートナー、銀行、仕入先、
顧客からの信用度が低い
・貸付けに対するアクセスが困難
S.A.R.L ・最低資本金額以上が設立時に必要とされる
・責任が限定的:出資者は出資額以上の責任を負わない
・既存の出資者は新たな出資者に対して厳格なチェックが適用される保証がある。
・企業は出資者の誰かや代表者が死亡した場合も存在し続けることができる
(定款にて特別に反対のことが規定されていない限り)
・設立証明のため、公証人を通すことが義務である
・出資者は企業の出資分を自由に譲渡することができる
S.A ・第三者に対して非常に強い信用がある
・大規模な資本動員の可能性がある(S.Aは広く資金を募ることができる)
・リスクは出資分に限定される
・出資額の支払が1/4のみで済む可能性がある
・出資者は自身の株式を原則自由に譲渡できる
・最低資本額が高い
・設立手数料が大変高い
・新しい企業にとっては監査役設置などの
管理方式がかなり重苦しいものとなる
G.I.E ・スタート時の出資額が無しで始められる
・設立形態がフレキシブルである
・組織や運営がとてもフレキシブルである
・GIEは決められた期間限定での、構成員の経済活動の開発・指導および、これらの活動の改善・向上を唯一の目的としている
・第三者、特に銀行への信用度が低い
・構成員はGIEの債務に対して連帯責任を負う

引用元:「GUIDE DU CRÉATEUR D’ENTREPRISE」(Version12 08/06/16)

 

日本でも最初にどのような法人を選ぶか、という点で迷う方がいらっしゃるみたいですがセネガルにおいてもどれにするかは議論の余地がありそうです。

 

SARLがメイン?信用できる相手だとPRする手段にも

データに基づいているわけではないですが、主観的にはセネガルの企業は基本的にSARLの形態をとっているところがかなり多い印象です。

 

SAに関しては見かけることはかなり稀であり、SAであることが一つの大きなステータスになっています。

これはもちろんSA設立のハードルの高さや、監査役の設置義務など運営上も守るべきルールが多いことに起因しているのでしょう。

SAという会社の形態自体が相手に信頼感を与え、ビジネスチャンスを拡げる役割を担っています。

 

余談ですが、こちらではSARL等で名刺や社印、Webサイトなどの媒体に資本金額をわざわざ記載している例を見かけます。

商取引上、「相手が信頼・信用できるか?」ということが特に大切重視される土地のため、資本金の多さを強調し相手を納得させることが重要なポイントなのでしょう。

 

またGIEは個人事業主が集まって作っているバス会社や漁民組織などが採用しており、少し特殊な印象があります。

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こうした街の露天商もみんな法人格を持っている・・・?

 
自分たちがSARLを選んだ理由

さて、前述のようにSAは諸々のハードルが高いこともあり、個人レベルで起業する場合の選択肢としては「個人事業主かSARLか?」という選択になると思います。

 

その中で自分たちは以下の点からSARLを選びました。

  1. 個人事業は売上に対して税金がかかり、さらに当局はしばしば売上を過大に評価し税金が多く取られやすい。
    一方SARLは利益に対して税金がかかるため、節税などの行動がとりやすい。
  2. 1人ではなく複数人の出資により企業を起ち上げるため。個人事業は不適当だった。

 

これらのうち、(1)については当初相談した会計士の方に言われたもののです。

こちらのような途上国では当局の恣意的な判断が入る余地が大きいものはあまり好ましくない、と感じています。

売上を相手が決定する可能性があるとなると、担当者のさじ加減によって税額が大きく変わることもあるでしょう。特に日本人がやってる企業となるとターゲットになりやすいのではないか、と感じ、それらの余地が少ないSARLの方が良いのではないかと当初判断しました。

 

が、しかし最近聞いた話では個人事業形態でも、法人税の適用対象になるなどすることで利益に対しての課税を選ぶことも可能という話を聞ききました。

もしそれが本当なのであれば少し判断は違ったかもしれません。

各種税率その他の面から個人事業主はSARLより負担が軽いため、当初は個人事業主で始めれたらよかったかな、という気も正直しています

もちろん、我々としては(2)の事情もありSARLが基本的に選ぶべき選択肢だったのでしょうが。

 

このように法人の形態選び1つとっても大きな選択になります。

 

一方、これまでなんとなくサラリーマンをしていて、会社という「箱」の中にいるとなかなか「箱にも色々な種類があるんだ」ということ、その違いなどについて気づくことがほとんどなかったのが正直なところです。

 1つ1つのステップが勉強になって楽しいな、と感じています。

 

続いては実際の手続きについて書いていきます。